社会 > 患者さん・医療関係者の皆さまとともに 研究開発
創薬研究の基本的な考え方
当社は、世界で最も歴史ある製薬企業のひとつとして、「かつてない治療の選択肢」を数多く届けてきました。それは、「治らない」をなくすだけでなく、「選べない」をなくしてきた歴史です。新しいMISSION「病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。」に応える新薬をこれからも世界に向けて継続的に創製します。
疾患領域について
疾患領域については、「中枢神経」および「免疫炎症」の2つを重点領域に掲げ、注力しています。同時に、更なる未来に向けて新領域や新モダリティ※についても取り組んでおり、次の柱となる領域・技術を見極めていきます。
※モダリティとは低分子化合物、中分子、抗体医薬を含む蛋白質医薬、核酸医薬、遺伝子治療といった治療のための創薬の手段。
創薬活動について
創薬活動においては、創薬ターゲットの設定や新技術獲得のチャンスを拡大するために、「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」など、新たなシナジーが生まれやすい環境を整備するとともに、産学官協業のオープンシェアードビジネスを積極的に進め、外部の創薬リソースも活用しています。また、三菱ケミカルグループ(MCGグループ)内のシナジーも追求し、「適切な医療を、適切なタイミングに、適切な患者さんに届けるプレシジョンメディシン」をスピード感を持って創製し、患者さんの治療満足度を高め、社会保障にも貢献することで持続可能な社会を実現します。
難病への取り組み
当社は、これまでに炎症性腸疾患や多発性硬化症といった難病に対して治療選択肢を生み出してきました。
治療薬の開発・提供
主な症状として進行性の筋萎縮と筋力低下が起こる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬としてエダラボンを開発し、日本の臨床試験結果を基に、日本、次いで韓国、米国、カナダ、スイスならびにその他のアジアの国々で承認を取得しました。
加えて、患者さんの負担軽減をめざしたエダラボン経口懸濁剤についても、より多くの患者さんにご使用いただくため、展開国の拡大に取り組んでいます。米国では2022年5月に承認取得、同年6月より販売を開始、日本では2022年12月に承認取得、翌年4月より販売を開始したほか、カナダおよびスイスにおいても承認取得し、それぞれ販売を開始しました。なお、米国では希少疾病および患者さんへの貢献が評価され、承認時から7年間の希少疾病用医薬品排他的承認(orphan-drug exclusive approval)を受けました。今後も引き続き展開国の拡大に努めるとともに、患者さんとご家族のQOL向上に取り組んでいきます。
新たな取り組み
日光を浴びることによって痛みを伴った皮膚症状がみられる赤芽球性プロトポルフィリン症およびX連鎖性プロトポルフィリン症に対する新しい治療選択肢として、デルシメラゴンを開発中です。また、この薬剤は希少疾患である皮膚や内臓の硬化を特徴とする全身性強皮症に対する治療薬としても、臨床試験を2021年に開始しました。
今後もMISSIONの実現をめざして研究開発に取り組み、難病と闘う世界の多くの患者さんとご家族に希望ある選択肢を届けることによって、健康で持続可能な社会の実現に貢献していきます。
オープンイノベーションの推進
新薬創製をめぐる環境は大きく変化し、創出難度は年々高くなっています。そのような環境においても、患者さんや医療現場へ価値のある新薬を持続的に創製、提供していくために、当社ではオープンイノベーションを積極的に推進しています。
戦略的研究開発拠点「湘南アイパーク」の取り組み
2019年5月には「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」(神奈川県)内に戦略的研究開発拠点を設置しました。製薬会社や創薬ベンチャー、創薬支援サービスや研究機器・医療機器、AI・IoTなどの入居企業と人的ネットワークを構築し協業機会の拡大を図っています。湘南アイパークは、武田薬品工業株式会社が研究所を開放して設立された経緯があり、当社は2021年1月に同社と社内評価データの一部を共有する枠組みを構築しました。公知化合物について社内で取得した初期評価データを共有し活用することによって、創薬活動の生産性向上と効率化をめざします。
中期経営計画21-25に示す通り、湘南アイパークでは、神経難病に対して特定した疾患遺伝子からの創薬や、自己免疫疾患の臨床検体・患者情報解析による疾患フェノタイプ探索からの創薬に取り組んでいます。
米国サテライト研究拠点
2021年4月には米国・ボストンエリアに設けられた医薬品研究開発企業を中心に約40社が入居するスマートラボ内に、サテライト研究拠点ニューロディスカバリーラボを開設し、ALSをはじめ中枢神経領域の新規創薬ターゲットの探索を開始しました。ボストンエコシステムでの早期創薬研究シーズ探索や協業機会獲得によって、中枢神経領域でのプレシジョンメディシンの実現を図ります。
当社はこれからも、グローバルヘルス分野の課題に対して独自の役割を果たすとともに、MCGグループ各社とのシナジーを創出します。投資子会社のMPヘルスケア ベンチャー マネジメント、海外研究拠点のボストンラボを活用しながら、アンメット・メディカル・ニーズが残る疾患の詳細な解析により、最適な患者層へ治療満足度の高い薬剤を提供するためのプレシジョンメディシンを実現すべく、創薬プロセスの改革とオープンイノベーションを拡大していきます。
発表日 | 提携内容 | 提携先 |
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2023年9月 |
田辺三菱製薬とマラリア研究機関の新規作用機序抗マラリア薬の共同研究に対し、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)から助成決定 |
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、Medicines for Malaria Venture(MMV)、ジョージア大学(UGA) |
2023年12月 |
東京大学との共同研究により、SGLT2の細胞内への糖取り込み機構をクライオ電子顕微鏡解析にて解明 Nature Structural & Molecular Biology誌に掲載 |
東京大学 |
2023年12月 | 株式会社高砂ケミカル、コニカミノルタケミカル株式会社、横河ソリューションサービス株式会社、テックプロジェクトサービス株式会社、大成建設株式会社、株式会社 島津製作所、三菱化工機株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研) |