社員紹介
創薬研究の成功率はわずかだ。
ゴールに到達する道程は険しい。
だからこそやりきる意志が必要だ。
研究職(創薬研究:合成)
2006年入社 理学研究科修了
創薬の先端領域で画期的な化合物を見出すことが私のミッション。
私は、幼い頃に喘息を患い、いつも薬を服用するような健康状態でした。そのようなこともあって、将来は医療に携わり、多くの人たちに感謝されるような仕事をしてみたいと漠然と思っていました。高校や大学に進むにしたがって、私は有機合成化学に関心を抱くようになりました。その知識を活かして医療に携わろうと思い、製薬業界を志望したのです。
田辺三菱製薬に入社したきっかけの一つに、祖父が服用していた薬があります。「この薬はよく効いて、ほんとうに楽になる」と私に話していた薬が実は当社の高血圧治療薬だったのです。患者さんに喜ばれている薬を創っている会社だと実感できたことが入社の大きな理由でした。
入社以来、新規化合物の合成に関わる研究を行っており、薬に結びつく可能性を秘める化合物の合成やデザインに取り組んでいます。
ハイスループットスクリーニングにより得られたヒット化合物を起点に、有機合成化学を用いて構造を最適化し、リード化合物(薬の素になる化合物)を経て開発候補品(薬になり得る化合物)へ導きます。多くの場合、そのプロセスにおいてin
vitro(生体外)活性、in
vivo(生体内)活性、薬物動態、毒性といったさまざまな課題が生じます。それらのいくつもの壁を乗り越えて、開発候補品を創製することが私の最大のミッションなのです。そのためにはデザイン・合成した化合物が課題を克服できたか評価することがきわめて重要であり、薬理、薬物動態研究所、安全性研究所の研究者と連携して研究を進めています。
私が携わっている探索合成は唯一化合物を創製する部署です。自分が生み出した化合物が画期的な新薬につながり、世界中の患者さんの健康に貢献する。そこに到達する道程はけっして容易ではありませんが、だからこそやりがいが大きく魅力あふれる仕事だと感じています。
新薬開発は長い年月をかけて前進するチームプレー。
そのプロジェクトにおいて、自分は何を成すべきなのか?
私が担当したプロジェクトの化合物が開発候補品になったことがあります。そのプロジェクトでは、in
vivo活性、薬物動態、毒性の評価など多くの過程で苦労しましたが、あらかじめ予測して化合物の最適化を行ったため、比較的短期間で開発候補品を見出すことができました。私の研究では、開発候補品を創製することが一つのゴールですので、とてもやりがいを実感したプロジェクトでした。田辺三菱製薬では、毎年、学会のポスターセッション形式で研究成果を発表するイベントがあり、その発表会で賞を獲得できたことも大きな励みとなりました。
このようにして見出された開発候補品は、その後、臨床試験実施の可否を判断するために、安全性をはじめとする様々な評価が行われます。評価を速やかに進めるためには、私たち合成ユニットが試験する化合物を大量に合成して安定的に供給しなければなりません。それほど大量の化合物を合成するのは、私にとって初めての経験でした。合成の方法から、合成に使用する危険物関連のコンプライアンスまで検討しなければならないことは数多く、どうにかスケジュールどおりに化合物の供給をやりとげた時には、また違う達成感を味わうことができました。
学生時代の研究は、テーマにしても成果にしても基本的に個人によるところが大きかったように思います。しかし、企業では、さまざまな分野の研究者が力を一つにして研究を進め、全員で成果を求めていきます。そのためには自分の能力を最大限に発揮することはもちろんですが、まわりとの連携も重要であり、私は常に自分が何をなすべきかを考えながらプロジェクトに取り組んでいます。
このようにもてる力をすべて注ぐ研究でも、思ったとおりに進まないことがほとんどです。創薬研究の成功率はとくに低いのです。それでも新薬を待ち望んでいる患者さんがいることを片時も忘れないようにして、情熱をもって研究に取り組んでいます。
自らの研究から画期的な新薬を生み出す。
私には、どうしても成し遂げてみたい夢がある。
私は現在、いまだに有効な治療法がない疾患を対象とした新薬開発プロジェクトのリーダーを任されています。私にとって大きなチャレンジであり、このプロジェクトを成功させることによって田辺三菱製薬の創薬力を深化させること、病気に苦しむ患者さんに真価を届けることが現在の一番の目標です。
新入社員の時に研修で見た映像がいまだに忘れられません。それは、当社の薬が投与された患者さんの映像でした。歩くことすらままならなかった患者さんが、当社の薬を服用した結果、その日のうちに歩いて帰宅できるようになり、とても喜んでいる姿が映し出されていました。大きな衝撃を受けるとともに、とても感動しました。そのような新薬を創ることが、私が田辺三菱製薬でどうしても成し遂げてみたい夢なのです。
- Career step
- 2006年研究職として代謝領域、腎領域、免疫炎症領域の創薬化学研究に携わる
現在は、免疫炎症領域に特化した探索合成部門にて、プロジェクト推進に携わる
※本記事の所属・内容は取材当時のものです。