田辺三菱製薬のニュースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者等への情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。ニュースに記載している情報は、発表日時点のものです。現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
ニュースリリース 複合的な要因からなる慢性疾患「肥満症」の治療薬 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」 薬価基準収載ならびに発売日のお知らせ
2025年3月19日
日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:シモーネ・トムセン、以下、日本イーライリリー)と田辺三菱製薬株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役:辻村 明広、以下、田辺三菱製薬)は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®皮下注2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス®」(一般名:チルゼパチド、以下、ゼップバウンド)について、本日3月19日、「肥満症*」を効能又は効果として薬価基準に収載されたこと、これを受け本年4月11日にゼップバウンドを新発売することをお知らせいたします。
- *承認されたゼップバウンドの適応症は、「肥満症 ただし、高血圧、脂質異常症又は 2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する ・BMIが35kg/m2以上」 です。

ゼップバウンドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の二つの受容体に作用する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。ゼップバウンドは、天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子ですが、GLP-1受容体にも結合するように改変されており、選択的に長時間作用するため週1回投与が可能です。本剤は、1回使い切りのオートインジェクター型注入器「アテオス®」により、週1回皮下注射で投与されます。あらかじめ取り付けられている注射針が、注入ボタンを押すことで自動的に皮下にささり、1回量が充填されている薬液が注入されます。患者さんが注射針を扱ったり、用量を設定したりする必要はありません。
また、本剤の用量は2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgの6規格のラインナップで、状態に応じての使い分けが可能です。通常、成人にはチルゼパチドとして週1回2.5mgの用量から開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射します。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、又は4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できます。
日本イーライリリーの糖尿病・成長ホルモン事業本部 本部長の小嶋 毅彦は次のように述べています。「肥満のある人は、日本に約2,800万人いると推定されています。そして肥満に伴う健康障害を合併している方が、肥満症に該当します。肥満症は、QOLの低下だけでなく、既に患っている慢性疾患の悪化や、更に他の健康障害を引き起こすリスクがあります。それにもかかわらず、肥満症は他の慢性疾患と同じレベルの必要な治療がなされてきませんでした。この度、日本の肥満症のある方へ新たな治療選択肢をお届けできることを大変嬉しく思います。ゼップバウンドを通じて、肥満症のある方がエビデンスに基づく適切な治療を享受し、より充実した生活を送ることができるよう貢献してまいります」
田辺三菱製薬の日本医薬事業本部長 倉垣 康隆は次のように述べています。「肥満や肥満症は、遺伝的、身体的、心理的、社会的など複合的な要因が合わさっており、生活習慣だけが原因ではないにもかかわらず、肥満や肥満症に対する偏見や差別(オベシティ・スティグマ)が社会課題として存在しています。この度ゼップバウンドが薬価収載され、肥満症の新しい治療選択肢として医療現場へお届けしていくにあたって、情報提供活動を通じた本剤の適正使用推進に努めることはもちろん、慢性疾患である肥満症が正しく理解され、肥満症のある人がよりよい生活を送ることができるよう、両社で活動してまいります」
日本におけるゼップバウンドの提供については、マンジャロ®同様、田辺三菱製薬が流通・販売を行い、日本イーライリリーと田辺三菱製薬が共同で情報提供活動を行います。
なお、製造販売承認を取得した適応症以外の目的で使用された場合の、ゼップバウンドの安全性および有効性は確認されていません。ゼップバウンドは国内の添付文書に則った適切な使用が求められる医薬品であり、国内で承認された使用法以外で使用された場合には、思わぬ健康被害が発現する恐れがあります。両社は、ゼップバウンドを必要とされる方が、安全かつ適切にお使いいただけるよう、添付文書および 最適使用推進ガイドラインに則った情報提供活動に注力してまいります。
日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、肥満症のある人々のより豊かな人生を実現するため、さまざまな研究開発や肥満症に関わる人々との活動を通じ、引き続き最善の努力を尽くしてまいります。
参考情報
製品概要
販売名 | ゼップバウンド®皮下注2.5mgアテオス® ゼップバウンド®皮下注5mgアテオス® ゼップバウンド®皮下注7.5mgアテオス® ゼップバウンド®皮下注10mgアテオス® ゼップバウンド®皮下注12.5mgアテオス® ゼップバウンド®皮下注15mgアテオス® |
---|---|
一般名 | チルゼパチド |
効能又は効果 | 肥満症 ただし、高血圧、脂質異常症又は 2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。 ・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する ・BMIが35kg/m2以上 |
用法及び用量 | 通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。 なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、又は4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる。 |
薬価 | ゼップバウンド®皮下注2.5mgアテオス® 0.5mL 1キット:3,067円 ゼップバウンド®皮下注5mgアテオス® 0.5mL 1キット:5,797円 ゼップバウンド®皮下注7.5mgアテオス® 0.5mL 1キット:7,721円 ゼップバウンド®皮下注10mgアテオス® 0.5mL 1キット:8,999円 ゼップバウンド®皮下注12.5mgアテオス® 0.5mL 1キット:10,180円 ゼップバウンド®皮下注15mgアテオス® 0.5mL 1キット:11,242円 |
製造販売承認取得日 | 2024年12月27日 |
薬価基準収載日 | 2025年3月19日 |
発売予定日 | 2025年4月11日 |
製造販売元 | 日本イーライリリー株式会社 |
販売元 | 田辺三菱製薬株式会社 |
最適使用推進ガイドラインについて
ゼップバウンドは、最適使用推進ガイドラインの対象薬剤であり、本剤が適応となる患者の選択、投与継続/中止及び再投与の判断は適切に行われることが求められています。治療対象となる肥満症以外での痩身・ダイエットなどを目的に本剤を投与してはならず、本剤の投与により重篤な副作用が発現した際にも適切な対応をすることが必要であるため、下記の内容を満たす施設において使用するべきとされています。詳しくは 厚生労働省の最適使用推進ガイドライン チルゼパチドをご参照ください。
※厚生労働省:最適使用推進ガイドライン チルゼパチドより一部抜粋(p.20)
施設要件 (右記に該当する医療機関であること) |
|
---|---|
医師要件 (右記の基準を満たす医師が、上記の<医師要件>に該当する) |
なお、日本肥満学会の専門医を有していることが望ましい。
|
ゼップバウンドの第3相臨床試験(SURMOUNT-J試験)について
SURMOUNT-J試験(NCT04844918)は、肥満または高度肥満、かつ肥満に関連する健康障害(耐糖能異常、脂質異常症または非アルコール性脂肪性肝疾患のうち、肥満の場合は2つ以上、高度肥満の場合は1つ以上該当)を有する日本人の成人を対象に、チルゼパチド10mgおよび15mgを週1回皮下投与したときの安全性および有効性をプラセボと比較した、第3相多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験です。試験参加者は、それぞれプラセボ群、チルゼパチド10mg群、チルゼパチド15mg群の3群に割り付けられ、4週間のスクリーニング期間を経た後、用量漸増期間として1回2.5mg週1回皮下投与から開始し、4週ごとに投与量を2.5mgずつ増量しました。それぞれの投与群が規定用量(チルゼパチド10mgまたは15mg)にまで達した時点で投与量を固定し、その後72週の試験終了時点まで投与が継続されました。
本試験は、肥満症診療ガイドライン2に記載されている、体重管理のための低カロリー食事療法および運動療法下で実施されました。試験期間中は、すべての試験参加者に対して管理栄養士または同等の資格を有する者による食事および運動に関するカウンセリングが実施されました。
また試験除外基準として、糖尿病のある人、糖尿病の診断基準となる臨床検査値が認められた人、肥満に対して内視鏡または機器による治療歴がある、または治療予定がある人、無作為化3カ月以内に減量を目的とした薬物治療歴がある、または体重減少を引き起こす可能性がある薬剤による治療歴がある人は、除外されました。詳細は プレスリリースをご参照ください。
チルゼパチドについて
チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の二つの受容体に作用する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。本剤の構造は、天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子ですが、GLP-1受容体にも結合するように改変されており、選択的に長時間作用するため週1回投与が可能です。チルゼパチドは日本において、2023年4月に2型糖尿病治療薬マンジャロ®として発売され、2.5mgから15mgまでの6規格を販売しており、既に臨床において多くの2型糖尿病のある人々に使用されています。世界においても、多くの国で2型糖尿病治療薬として販売されており、肥満治療薬としても米国およびその他数か国において承認されています。米国では肥満症治療薬として、2023年12月よりZepbound®の製品名で発売されています。
肥満と肥満症について2
日本における「肥満」は、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI)25以上と定義されています。BMIが35以上の場合は、高度肥満となります。
一方で「肥満症」は、肥満(BMI25以上)があり、かつ肥満に起因ないし関連する健康障害(合併症)を1つ以上有するか、あるいは内臓脂肪蓄積がある場合など関連健康障害の合併が予測され、医学的に減量を必要とする病態と定義されており、減量による医学的治療の対象になる慢性疾患です。
肥満や肥満症は、生活習慣のみならず遺伝や環境などの様々な要因が関与しており、他の様々な健康障害と密接に関連していると言われています。
日本には「肥満」に該当する人口が2,800万人1いるとされていますが、そのうち肥満に関連する健康障害を合併する「肥満症」の診断や治療は、他の慢性疾患に比べて積極的に行われていない状況があります。
肥満症の診断に必要な健康障害
- 1耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 2脂質異常症
- 3高血圧
- 4高尿酸血症・痛風
- 5冠動脈疾患
- 6脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 7非アルコール性脂肪性肝疾患
- 8月経異常・女性不妊
- 9閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 10運動器疾患(変形性関節症:膝・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
- 11肥満関連腎臓病
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。日本の患者さんが健 康で豊かな生活を送れるよう、日本で50年にわたり最先端の科学に思いやりを融合させ、世界水準の革新的 な医薬品を開発し提供してきました。現在、がん、糖尿病、アルツハイマー病などの中枢神経系疾患や自己免 疫疾患など、幅広い領域で日本の医療に貢献しています。詳細はウェブサイトをご覧ください。https://www.lilly.com/jp
田辺三菱製薬について
三菱ケミカルグループ(MCG)のファーマ部門である田辺三菱製薬は、1678年に創業、日本の医薬品産業発祥の地である大阪の道修町に本社を置き、医療用医薬品事業を中心とする製薬企業として、最も歴史ある老舗企業の一つです。当社は、「病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。」をMISSIONとし、これを実現するため、中枢神経、免疫炎症、糖尿病・腎領域に加え、がん領域にも取り組んでいきます。有効性・安全性が高い患者層を見出し、治療満足度の高い薬剤をお届けする「プレシジョンメディシン」の他、予防・未病、重症化予防、予後にも目を向け、治療薬を起点に患者さんの困りごとに応える「アラウンドピルソリューション」を展開していきます。https://www.mt-pharma.co.jp/
-
References:
- 1:厚生労働省 国民健康・栄養調査(令和元年) https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf(2024年10月閲覧)
- 2:肥満症診療ガイドライン2022 学会誌:日本肥満学会/JASSO
本件に関するお問い合わせ先
田辺三菱製薬株式会社 ファーマ戦略本部 PR部
TEL:06-6205-5119