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ニュースリリース パーキンソン病治療薬候補品ND0612の第3相臨床試験において良好なトップライン結果を公表
2023年1月10日
三菱ケミカルグループの田辺三菱製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役:上野裕明、以下「当社」)は、当社の完全子会社であるニューロダーム社(本社:イスラエル レホボト市、CEO:一色健吾)が、1月9日に、パーキンソン病治療薬候補品(ND0612)で実施した第3相臨床試験(BouNDless試験、以下「本試験」)において、事前に設定した重要な評価項目を達成するトップライン結果を取得したことを公表しましたので、お知らせします。
本試験は、運動症状の日内変動を有するパーキンソン病患者さんを対象にグローバルで実施した、多施設共同無作為化ダブルブラインドダブルダミー試験です。本試験では、レボドパ/カルビドパ配合製剤(LD/CD)を持続投与可能な皮下投与デバイスと組み合わせて24時間/日投与する治療薬候補品ND0612に必要量のLD/CD経口剤を加えて至適用量とした被験者(ND0612群)と、LD/CDの経口剤のみで至適用量とした被験者(経口剤群)にランダムに割り付け、12週間投与しました。その結果、ND0612群は経口剤群と比較して、主要評価項目である「日常生活に支障のあるジスキネジアを伴わないON時間(Good ON時間)」を統計学的に有意(p<0.0001)に改善しました(1.72時間)。また、重要な副次評価項目である「OFF時間」で統計学的に有意な結果が示された(p<0.0001)ほか、その他の副次評価項目「国際パーキンソン病・運動障害疾患学会-パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)パートII(日常生活動作)」、「全般的印象評価尺度-変化(PGIC)」、および「臨床全般改善度(CGI-I)」についても、経口剤群と比較して統計学的に有意な改善を示しました(いずれも、p<0.0001)。ND0612群の全身性の安全性プロファイルは既知のLD/CDの経口治療と同様であり、発現率が5%以上の有害事象のうち注入部位反応の発生頻度はND0612群の方が高かったものの、おおむね軽度から中等度で、「ON/OFF現象」および転倒は、経口剤群においてより高い頻度で発現しました。ND0612群の離脱率は6.3%で、そのうち副作用による離脱は5.5%だった一方、経口剤群ではそれぞれ6.1%と3.1%でした。なお、本試験の詳細な結果は、今後学会などで発表予定です。
パーキンソン病が進行すると、運動症状の日内変動が出やすく、経口薬でのコントロールが難しくなり、患者さんへの侵襲性が高い外科的治療などが検討されます。本試験結果を受け、LD/CDを液剤化し、デバイスと組み合わせて持続的に皮下投与することで、運動症状の日内変動を確実かつ持続的に緩和するND0612の開発を通して、パーキンソン病が進行し、症状のコントロールが難しくなった患者さんの治療に貢献できることを期待しています。
ND0612は今年米国での申請に続いて、欧州での申請をめざします。中枢神経領域を研究開発の重点領域に定める当社グループは、神経変性疾患に向きあうすべての人に、新しい治療の選択肢を届けるための取り組みを進めていきます。
▪ニューロダーム社プレスリリース(2023年1月9日付)
NeuroDerm Announces Highly Positive Results from the Pivotal Phase III BouNDless Trial Evaluating ND0612 in Parkinson’s Disease Patients with Motor Fluctuations
https://neuroderm.com/our-company/news-and-events/positive-results-from-the-pivotal-phase-iii-boundless-trial/
パーキンソン病について
パーキンソン病の患者数は世界におよそ1千万人以上と言われています。1 パーキンソン病は、中脳にある黒質のドパミン神経細胞が変性し、神経伝達物質のひとつであるドパミンが減少することで引き起こされると考えられています。2 運動症状としては、運動が減少する無動(もしくは運動緩慢)を主要症状として、振戦(手足のふるえ)と(筋)強剛(こわばり)の3大症状に加え、姿勢保持障害があります。3 また、睡眠障害、精神・認知・行動障害、自律神経障害、感覚障害等の非運動症状も伴うことが知られています。3 根本的な治療方法はないものの、減少しているドパミンを補って抗パーキンソン病効果を示すレボドパが治療剤として用いられています。3 レボドパはパーキンソン病における最も重要な補充療法で、レボドパ分解阻害薬(通常、カルビドパ)と併用して、多くのパーキンソン患者さんに投与されています。4 一方で、経口剤のレボドパでは、レボドパの血中濃度の変動が、薬が効きすぎて生じる不随意運動(ジスキネジア)や薬の効き目が切れるウェアリング・オフなど、日常生活に支障をきたすような運動合併症状の一因となります。5
ND0612について
ND0612は世界で初めてレボドパおよびカルビドパの液剤化に成功した持続皮下注製剤です。レボドパとカルビドパの経口投与では、その血中濃度が安定しませんが、レボドパとカルビドパを液剤化し、24時間持続投与可能な皮下投与デバイスと組み合わせることで、薬物動態プロファイルを改善し、安定したレボドパ血漿中濃度を維持することを通して、パーキンソン病患者さんの運動症状の日内変動を減少させることをめざします。これにより、侵襲性が高い外科的治療などを回避し、パーキンソン病患者さんの治療におけるアンメットニーズにこたえることを期待しています。
ニューロダーム(NeuroDerm, Ltd.)について
ニューロダームは、中枢神経領域の治療薬に関して、新たな製剤研究や、医薬品と医療機器(デバイス)とを組み合わせる優れた技術開発力を有するイスラエルの医薬品企業で、革新的な技術を通じて治療の負荷を軽減し、患者さんとその家族の生活の質を改善することをめざしています。田辺三菱製薬は、研究開発の重点領域に定める神経領域でパイプラインを拡充するため、2017年10月に完全子会社化しました。
www.neuroderm.com
参考文献
- 1.Who Has Parkinson’s? Parkinson's Foundation.
https://www.parkinson.org/understanding-parkinsons/statistics#:~:text=More%20than%2010%20million%20people(2022年11月10日閲覧) - 2.Parkinson's 101. The Michael J. Fox Foundation.
https://www.michaeljfox.org/parkinsons-101#q2(2022年3月15日閲覧) - 3.パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson_2018.html(2022年12月27日閲覧) - 4.S Fahn. Levodopa in the treatment of Parkinson’s disease. J Neural Transm Suppl.2006;(71):1-15. doi: 10.1007/978-3-211-33328-0_1.
- 5.C D Marsden. Problems with long-term levodopa therapy for Parkinson’s disease. Clin Neuropharmacol. 1994;17 Suppl 2:S32-44.
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