田辺三菱製薬のニュースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者等への情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。ニュースに記載している情報は、発表日時点のものです。現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
ニュースリリース ヒト化抗RGM抗体 MT-3921について 米国において、脊髄損傷患者さんを対象とする第2相臨床試験を開始
2021年9月8日
田辺三菱製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:上野裕明、以下「田辺三菱製薬」)と国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科 分子神経科学/創薬神経科学の山下俊英教授の研究グループは、かねてよりヒト化抗RGMa抗体であるMT-3921について共同で開発を進めてきました。この度、田辺三菱製薬の米国における開発子会社であるミツビシ タナベ ファーマ ディベロップメント アメリカ(Mitsubishi Tanabe Pharma Development America, Inc.、社長:九鬼秀紀、 以下「MTDA」)が、MT-3921について、脊髄損傷患者を対象にグローバル第2相臨床試験を開始したことをお知らせします。
MT-3921は田辺三菱製薬が注力する神経疾患領域のパイプラインの拡充に寄与する全く新しい治療薬候補であり、山下俊英教授の基礎研究成果をもとに、両者の産学連携から生まれました。MT-3921のPOC(Proof of Concept)試験となる第2相臨床試験(MT-3921-A01試験)は、72名の脊髄損傷患者さんを対象としてMT-3921の有効性、安全性および忍容性を評価する多施設共同、プラセボ対照、無作為化、ダブルブラインド、並行群間比較試験です。主要評価項目は投与6ヶ月後における上肢運動スコアのベースラインからの変化量です。本試験はグローバル試験であり、米国、カナダ、日本で実施していきます。また、本試験において、山下教授の研究グループは、試験参加施設への説明や議論に参画し、さらに、適宜、非臨床試験を実施する等、本試験をバックアップしていきます。なお、MT-3921は2021年7月に脊髄損傷の治療に対して米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック1に指定されています。
近年再生医療の主要な治療目標として脊髄損傷に多くのアプローチがなされていますが、未だ有効な治療法として確立された段階にはありません。田辺三菱製薬グループおよび大阪大学大学院医学系研究科は、今後もアンメット・メディカル・ニーズに応える、医薬品の研究開発に積極的に取り組んでいきます。
- 1 US Food and Drug Administration. Fast Track Information Page: https://www.fda.gov/ForPatients/Approvals/Fast/ucm405399.htm
◆MT-3921について
MT-3921は、山下教授の研究グループの基礎研究成果をもとに、2005年より、両者が共同で創薬したヒト化抗RGMa抗体です。RGMa(Repulsive guidance molecule A)は神経細胞の生存および神経回路の再生を阻害し、炎症作用の亢進にも関わり、脊髄損傷、脳梗塞、多発性硬化症などの神経疾患の病態を悪化させる役割をもつことが非臨床研究にて明らかになっています。動物を用いた疾患モデルでの検討は両者でそれぞれ分担して行われ、その検討の結果、ラットおよびサルの各種動物モデルにおいて脊髄損傷に起因する運動機能障害の改善効果および神経再生の促進効果が示されました。なお、山下教授の研究グループによる研究は日本医療研究開発機構(AMED)の研究助成を受けて実施されました。
◆脊髄損傷について
脊髄損傷は自動車事故、転落・転倒、スポーツ関連事故および暴力等による傷害が原因で生じる疾患です。その損傷の程度は様々で、運動麻痺、感覚の喪失及び膀胱直腸機能の障害をもたらすことがあります。また、脊髄損傷は患者さん本人の健康に影響するだけでなく、家族にも多大な負担が生じます。
米国では毎年約18,000名弱の患者さんが新たに脊髄損傷を罹患しているといわれていますが,現時点では、脊髄損傷に対してFDAから承認されている医薬品はありません。脊髄損傷の現在の治療は、脊椎の外科的安定化、集中的な神経学的リハビリテーション、急性期および慢性期の合併症の予防と治療に焦点が当てられている一方、外傷性神経麻痺については未だに治癒手段がありません。そのため、有効性及び安全性が高い新しい治療法が望まれております。
◆田辺三菱製薬について
田辺三菱製薬は、1678年に創業、日本の医薬品産業発祥の地である大阪の道修町に本社を置き、医療用医薬品事業を中心とする製薬企業として、最も歴史ある老舗企業の一つです。未来のヘルスケアニーズの変化を見据え「病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。」をMISSIONとして定め、事業活動を展開しています。2030年のめざす姿「一人ひとりに最適な医療を届けるヘルスケアカンパニー」をVISION 30とし、これを実現するため、中枢神経・免疫炎症領域を中心に、有効性・安全性が高い患者層を見出す治療や予防法の創出をめざす「プレシジョンメディシン」に取り組みます。また、予防・未病、重症化予防、予後にも目を向け、治療薬を起点に患者さんの困りごとに応える「アラウンドピルソリューション」を展開しています。田辺三菱製薬は、三菱ケミカルホールディングスグループの一員です。
https://www.mt-pharma.co.jp/
◆Mitsubishi Tanabe Pharma Development America, Inc.
ミツビシ タナベ ファーマ ディベロップメント アメリカ(MTDA)
MTDAはニュージャージー州ジャージー市(Jersey City, New Jersey)を本社拠点にしています。MTDAは田辺三菱製薬が100%出資するMitsubishi Tanabe Pharma Holdings America, Inc.(ミツビシ タナベ ファーマ ホールディングス アメリカ)の子会社です。今後も患者さんのアンメットメディカルニーズに応える革新的な医薬品の開発を進めてまいります。
http://mt-pharma-development-america.com/
◆大阪大学について
大阪大学は、江戸時代に大阪に開設された懐徳堂、適塾を精神的源流とし、大阪の市民ならびに政財界の要望を受け、1931年に第6番目の帝国大学として創立されました。
現在、11学部、16研究科、6附置研究所等からなる研究型総合大学として発展を続けています。
社会と共に創造活動を展開する、社会との「共創(Co-creation)」をキーワードとして、創立100周年である2031年に「社会変革に貢献する世界屈指のイノベーティブな大学」となることを目指しています。
https://www.osaka-u.ac.jp
◆お問合せ先
報道関係者の皆様
田辺三菱製薬株式会社 コミュニケーションクロスローズ部 TEL:06-6205-5119
研究に関すること
山下 俊英(やました としひで)
大阪大学 大学院医学系研究科 分子神経科学 教授
TEL:06-6879-3661 FAX: 06-6879-3669
E-mail: yamashita@molneu.med.osaka-u.ac.jp